どんな実験も記録に残しておくべきである。しかしたいてい失敗し ( 記録は残す) た際の実験の詳しいデータは残っていない。したがって役に立たな い。
まずこういうことはないが、こういうときに貴重なデータが残って いるときがある。またこのときのデータを元に次の実験を行うとき のヒントになることがある。
試料の熱処理の温度がたまたま低かったために特性のいいものがで きていたなんてことがある。こういうことはそうあるものではない が、意図しなくてパラメータが思いがけないところに設定されてう まく行くことがあるのだ。そんなときに記録がなかったらどうしよ うもない。したがってどんなときにも記録を捨てたりしたらいけな い。
実験がうまく行くのは、いままでやっていてその延長にある場合で ある。たいていの今までやったことのない冒険みたいな実験は失敗 するものである。これを乗り越えるときの楽しさといったらない。 しかし長い道程でもある。こういうときに役に立つのが、失敗した 記録である。つまりマイナスをプラスに変えることができるのだ。 ( 失敗の記録集) 実験をやっていて失敗し、それをどういうように克服していったか というのを記録しておくといい。こういう情報はもちろん他の人に 役立つから定期的に研究室内で報告しておくのがいちばん望ましい。 たいていの会社ではこういうことに長い時間をかけている。それは それだけの時間の節約につながると評価されているからなのだ。大 学の研究室でもいいことは積極的に採り入れるようにするといい。
たとえば、断線したのを発見したというのはまだまだ初歩的な失敗 であり、克服も楽である。しかしパラメータを逆にしてうまくいっ たなんていう例もある。つねづね思うのは、人間は失敗するように で( 失敗の後始末が重要)きているということである。道 に穴があるとたいてい落ち込んでしまう。問題はそこからどういう ように這い出てくるかということである。そこに人としての力を問 われるのだと思う。コーヒーをこぼしたとする。そういうことはよ くある。ここで、一番大切なことは人に迷惑をかけないうちに拭き 取ることである。それができるかできないかによって人間性を問わ れる。もう一度繰り返そう。失敗は構わない。その後の適切な処理 が大切である。