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超伝導体の電磁現象

超伝導体は電気抵抗がないという特性を有し、そのためにエネルギー 関連工学やエレクトロニクス、医療分野など極めて多岐にわたって の応用が期待できる、というのが広く常識的に知られた事項であろ う。しかし、この特性は超伝導体であるからという必然的なもので はなく、実はそれなりの必要条件を満たした場合に限られる。通常、 磁界下で電流を流した場合(電流しか流さない場合も自己磁界があ るので、これに含まれる)、超伝導体中で量子化した磁束にLorentz 力が働き、もしその作用で磁束が速度で運 動すれば、磁束密度をとして の誘導起電力が生じる[1]。この関係式 をJosephsonの式という。そのため超伝導体中の常伝導電子が駆動 され、金属と同様な電気抵抗が生じてしまう。したがって、超伝導 体でも、そのままでは使えない。一時、発見されてフィーバーとなっ た高温超伝導体も広い温度および磁界範囲でこういう状態にあり、 そのためにすぐに応用が可能になるという期待を裏切り、多くの企 業がこの分野から撤退することとなった。電気抵抗なしに電流を流 すためには、上の式からも簡単に理解できるように、磁束の運動を 止めてやる必要があり、これを磁束ピンニングという。こうした作 用が超伝導体の工学的応用に必要不可欠であり、その作用をするい ろんな欠陥や析出物をどのようにうまく超伝導体中に導入するかが 重要な点である。

こうした超伝導体の電磁現象は内部の量子磁束の運動と密接に関連 しており、ちょうど粘性力および摩擦力を有する媒体中を運動する 物体のように力学的に記述することができる。なお通常、量子磁束 の質量は無視でき、慣性力は考えない。すなわち、運動方程式は Lorentz 力(駆動力)、ピンニング力(摩擦力に対応)と粘性力の釣り合 いで与えられる。


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otabe@cse.kyutech.ac.jp
1996年11月20日 14時43分47秒