Q and Aコーナー
A. 血液の重大な病気があります。一番有名なのは血液のガン、白
血病です。特に若い人に現れやすいので人生が台無しになりかねま
せん。この究極の治療法は血液を作る造血細胞を一時全部殺して、
正常な造血細胞を外から入れることです。これには血液型が厳密に
一致していないといけません。具体的にはHLAという白血球の型が6
座のうち4 から5 一致する必要があります。これは兄弟間であれば
1/4の確率ですが、一人に対して探そうとすると数千から1万人を調
べないといけません。以前はなになにちゃんを救え、ということで
ボランティアが頑張っていました。
日本では1993年に骨髄バンクが設立されて2000年現在13万人のドナー
登録者があります。これで70-80%の患者に対応できるそうです。ド
ナー登録者が30万人いれば90%の患者に対応できます。さまざまな
移植手術のうちで生きているうちに貢献できるというのも骨髄移植
の面白いところです。
Q. もしかして骨髄採取に失敗すると下半身不随になるのではない
ですか?
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A. 骨髄液をとるところを脊髄から取ると思っていませんか。恥ず
かしながら私はそのように思っておりました。骨髄液は骨の髄にあ
りますので、どの骨でも取れるます。そこで一番大きな腰骨(骨盤、
腸骨)から取ることになっております。この骨は広いし、皮膚から
も近いから体をむちゃくちゃ傷付けるわけでもありません。具体的
にはうつぶせにして大きめな注射針を腰のベルトの位置くらいに
6,7個所に突き立てて、それからさらに骨の数十個所にぶすぶすと
入れて骨髄液を採取するそうです。
この採取手術では局所麻酔ではなくて、全身麻酔をすることになっ
ております。したがって、重大な事故になるとすると麻酔事故が一
番恐ろしい。そこでドナーの心臓、肺臓の機能をきちんと健康診断
などで調べておくということがなされます。
A. 手術中は全身麻酔ですから全然分かりません。気が付くと病室
に戻っていたという感じです。さらに数時間は麻酔で朦朧としてい
ますからその間も良く分かりません。私が気が付きはじめたのは夜
中寝ていて寝返りをうとうとしたときに、あいたたという感じでし
た。その後、姿勢を変えないと何でもないのですが、触るとか位置
を変えるようなことをすると痛かったです。
骨髄バンクからの術後のアンケートには「痛みは耐えがたい痛みを10
としたときにどのくらいでしたか」というのがありまして、2から3
と答えました。
一日づつ回復しますので、私の場合には一週間ほどすると触っても
痛くないくらいに戻りました。コーディネートの方は自覚症状が無
くなるまで、一週間に一度づつ確認の電話を入れてくれることになっ
ております。
A. あります、あります。麻酔をかけますので10万人に1人か2人く
らいは死にます。これはあまり良く分かりません。というのが普通
は健康な人に麻酔をかけるのは普通は無いからです。一方、患者さ
んは麻酔事故のリスクは背負うけれども手術により病気がなおると
いうメリットがあるのでこれは引き受けます。麻酔に関してはその
他にも副作用があって麻酔中には人工呼吸になり、パイプが
口にはいるために、歯が悪いと折れたり抜けたりしますし、声帯や
喉を痛めたりすることもあります。また尿道カテーテルを使うので
尿道を痛めることもあります。
手術自身には針が折れたりすることがあり、外科的手術により摘出
することがあったそうですが、まず低いでしょう。また使う針は使
い捨てですので血液感染は無いはずです。
A. まずドナーになるのには10ccの血液を出すだけでできます。ちょっ
と計算してみるとドナーに登録したけれども採取手術に至らない人
がほとんどです。現在年間500-1000人程度の移植手術があります。
登録されているドナーは13万人ですが、将来は30万人まで増やそう
と頑張っているところです。ということは35歳で登録して50歳まで
続けたとしても9割がたはお声がかからないことになります。
だから無駄とか、登録しなくてもいいとかいう話ではありません。
むしろこの多くの人たちの登録により患者さんの支えになるのです。
もちろん私みたいに採取手術をして直接に患者さんにあげることが
できる派手な例もありますが、登録している人たちの善意はなんら
変わりません。むしろ同じ勇気が患者さんを支えているのです。
私がなぜ登録しようとしたのかというと、面白いシステムだと思っ
たからです。私も科学者の一人ですからいろいろと夢があります。
しかし、なかなか人間の知恵では神様の作った世界は理解しがたい
ところがあります。お医者さんは人の命に直結するだけに、助けら
れないときの悔しさは想像にあまりあります。しかし人間は社会
をつかってこの科学技術だけでは解決できない穴を埋めることがで
きます。一人の気の毒な患者のために数千人のHLAを調べるという
のは大変な作業です。逆に数万人のドナー登録者を持つことで年間
数千人という患者に希望を与えられる...すばらしいシステム、面白
いシステムと思いませんか。実際に体験することによりその利点や
問題点を勉強できたらと考えたのが私が登録した理由です。
A. ドナーに選ばれてもいろいろの危険性があるので、断ることが
できます。これも一つの勇気です。私の場合にはドナーに選ばれた
というのが宝くじにあたったような嬉しさがあったので、危険性は
ごくごく小さいと見てやることにしました。要するにドナー体験に
より失うものよりも得られるものが多いと考えたんですね。
A. 体重1kgあたり最大で20ccを越えないように取ります。私の場合
にはおおよそ70kgですから、700から1400ccの範囲にあります。結
果1200ccを取ったそうですが、自己輸血800ccが戻ります。ちょっ
と体重は減りそうなものですが、体重計で見たところまったく体重
は変化していませんでした。絶飲食などもあるのに、みごとなもの
です。骨髄採取でダイエットはできないようですね。
A. 交通費は骨髄移植財団から毎回支払われます。入院や検診はす
べて患者さんの健康保険から支払われます。入院にあたって新しい
下着やスリッパをかみさんが買いましたが、入院支度金というのが
5000円でますのでこれで身の回りのものを準備できます。手術が終
わった翌日に図書券をもらいました。これは嬉しい。花束をもらっ
たというのをどこかのホームページでも見ました。
A. かかりますね。少なくても以下のことがあります。
- ドナー登録に、一次と二次検査を行うための数時間
- ドナー候補に選ばれて了解すれば、三次検査のための数時間
- 最終候補になり同意すれば、最終同意のための数時間
- 健康診断および自己採血のために半日
- 自己採血のための数時間
- 入院で5から6日
- 術後の健康診断で数時間
数時間は1時間から長くて3時間程度です。これらはボランティア休
業が認められていればどうどうと休めますが、だめだと有給を使わ
ないとだめですよね。時間が厳しい人は無理かも知れません。これ
らはほとんど平日に行われるので、土日にやってくれないかという要
望を出している人もあるとコーディネータから聞きました。積極的
でいい意見だと思います。
A. 骨髄バンクのホームページによれば、移植を受けても完全にな
おるのはざっと50%くらいしかおりません。 参考ページ
これはショックでした。それじゃ希望になるのだろうかと。
しかし私の理解が甘い。移植を受けるというのは本当に最後の最後
の手段で、これだけが患者の希望なのです。悲しい。骨髄バンクの
パンフレット も言葉を選んでいてチャンスを与えてください
と書いてあります。これはそういう意味を含んでいるのです。担当
医師にもこの話を伺ったのですが、この50%というのは今後はどん
どん改善されるだろう、症例が増えるにつれて経験が増えてくると
いうことです。是非このシステムにより移植例がどんどん増えてそ
の結果、この病気は怖くないというところまでいって欲しいもので
す。
A. よく知っていますね。骨髄移植では白血球の型が一致すること
が重要で、赤血球の型(A,B,O,AB)は関係ありません。私の場合には
患者さんと私は血液型が違うので、患者さんは完治すると血液型が
B型に変わります。変な性格にならなければいいのだけれども(冗談
です)。理屈は血液中には赤血球と他の型の赤血球を溶かす抗体が
血清にあります。患者さんは造血細胞を殺したので、A型の赤血球
とB型を溶かす血清は減っていきます。それに対して私の骨髄を移
植されて造血が進むと、B型の赤血球とA型を溶かす血清が作られて
いきます。こうして徐々に入れ替わっていくということです。B型
が足りないときには輸血をすることもあるそうです。それにしても
血液型が変わるってどういうことでしょうね。
A. 専門家ではないので細かくは知りませんが、実現しそうだなと
思われるのは、薬を使って血液中の造血細胞を増やしてこれを成分
献血みたいな方法により回収するというものです。これであれば、
全身麻酔さらに針を突刺すなんて野蛮なことをしなくてもしばらく
横になるだけで大丈夫です。なんでも血縁間の移植にはこれが試験
的に使われているということを聞きました。まだ副作用の具合いを
評価しているところとか。これが実現すればそれこそ献血をする人
であればだれでも提供できるようになるでしょう。
臍帯血(さいたいけつ)を取っておくというのもいい方法だと思いま
す。赤ちゃんはどんどん生まれてきますからこれを利用するのはう
まいやり方です。臍帯血バンクのページ
最終的には人工血液でしょうけれども、これは相当遠いそれこそお
医者さんたちの夢だろうと考えております。
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