「超伝導体の浮上実験」
九州工業大学 情報工学部
電子情報工学科
小田部 荘司
2つのドーナツ型の磁石のN極どうしあるいはS極どうしは反発する
ので、鉛筆をしんにすると浮きます。しかし鉛筆を外してしまうと
不安定になりN極とS極がくっついて安定します。
ここでは超伝導体を用いて磁石にしてみます。そして普通の磁石と
合わせて浮かしたり釣り下げたりしてみます。ですから本当の題名
は「超伝導体による永久磁石の浮上実験」というのが正しいです。
- 酸化物超伝導体(YBa2Cu3O(7-d)のバルク材)
- 永久磁石
- 液体窒素(-196度)
- 発泡スチロールの容器
- ドーナツ型磁石 2つ
- 鉛筆
実験には液体窒素を用います。液体窒素は空気中の窒素(N2)を
-196度まで冷やすことにより液体にしたものです。冷凍庫内でも
-20度程度しかありません。-200度の極低温の世界をかいま見
てみましょう。
実験1: 花を凍らせてみましょう。普段は軟らかい花び
らも一瞬で凍り付き手で握るとばらばらになります。
実験2: バナナを凍らせてみましょう。軟らかいバナナ
で釘が打てるようになります。あまり凍らせるとばらばらになりま
す。
実験3: 空気を凍らせましょう。液体窒素および液体酸
素の混合の液体になります。液体酸素は磁性を持つので磁石につく
という性質を示すようになります。
実験1: 超伝導体による磁石の浮上
- 室温においておいた超伝導体を発泡スチロールの容器に並べ
て置いて、液体窒素で-196度まで冷やします。そうすると超伝
導体は超伝導状態になります。
- 永久磁石を超伝導体に近づけると反発力を感じます。そのま
ま永久磁石をより近づけ、磁束線を超伝導体内に入れます。
- あら不思議、永久磁石は超伝導体の上に安定して浮きます。
実験2: 超伝導体による磁石の釣り下げ
- 永久磁石の上に発泡スチロールの容器を置き、その中に室温
で超伝導体をいれます。液体窒素を入れて超伝導体を冷やして超
伝導状態にします。
- 容器を持ち上げてみると、あら不思議、永久磁石は超伝導体
に引き寄せられて釣り下げることができます。永久磁石は安定し
て回転させることもできます。
超伝導体が超伝導状態になると、磁束線の動きを止めるピン
止め効果が働きます。実験1では磁束線を後から超伝導体に入れ
ようとするので、ピン止め効果により反発力を示し、一部ピン止め力
を超えて侵入した磁束線は超伝導体内に固定されます。このとき超
伝導体は磁石に対して大きく反発し、一部固定する力が働きます。
一方、実験2では磁束線がもともと超伝導体に入っていたので、磁
石が落ちようとして磁束線が超伝導体から外れようとすると、ピン
止め効果で磁束線は固定されます。このとき超伝導体は磁石に対し
て大きくくっつき、一部が反発する力が働きます。
つまり超伝導体を磁石にすると、ただの磁石とは違って反発する力
とくっつく力を同時に示します。ですから安定して一方では反発し
て浮き、一方ではくっついて浮くということができます。
使用したY系酸化物超伝導体バルク材は新日本製鐵株式会社 先端
技術研究所から提供してもらったものです。お礼申し上げます。
- 「応用超伝導」 講談社ブルーバックス 岩田章
- 「超伝導」 岩波新書 中嶋貞雄
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