Y-123 単結晶超電導体のピーク効果 山崎映人1, 平野達也1, 松下照男1;2 (1 九工大・情報工, 2 九大・情シス) はじめに Bi-2212 単結晶超電導体では低磁界 果をさらに解析して磁束線に関する変位- 復元 領域において臨界電流密度Jc に鋭いピーク効 力特性が得られる。 果が観測されているが、これが生じる磁界は温 結果及び検討 図1 にSQUID 磁力計によって 度にあまり依存しない。このピーク効果の原因 得られた磁化から求めた臨界電流密度を示す。 は磁束線格子の三次元から二次元へのクロス この図からわかるように臨界電流密度に2 つの オーバーによるものであると考えられている。 ピークが観測される。これまでに観測された双 一方でY-123 単結晶超電導体では高磁界領域で 晶面を含むY-123 単結晶超電導体のピーク効果 ブロードでかつ温度に大きく依存するピークが の測定ではピークは1 つであり、また温度の上 観測されるが、特に双晶面を含まない単結晶試 昇とともにピーク磁界は単調に減少して高温で 料ではピークが2 つあるという報告がされてい はピーク効果が消失している。今回の測定では る1)。このY-123 超電導体のピーク効果のメカ ピーク効果が80 K を超えても観測されており、 ニズムについては現在議論されており、その一 高磁界側のピーク磁界は温度の上昇とともに上 つとして超電導体内の酸素欠損のような弱い超 昇している。高磁界側のピーク効果のメカニズ 電導相による磁界誘起型のピンニングが挙げら ムを解明するためにCampbell 法の測定から求 れている。すなわち弱い超電導相が常電導に転 めたLabusch パラメータと相互作用距離の詳細 移する磁界においてピンが強く働くというもの については当日述べる。 である。しかしこれまでに双晶面をもたず2 つ のピークを示すY-123 超電導体の単結晶試料に おける低磁界側のピーク効果はそのような磁界 誘起型のピンニングでは説明できないことが 明らかになった2)。今回は高磁界側を含めた2 つのピークについて測定を行い、それらのピー ク効果の原因を明らかにする。測定方法として Campbell 法を用いてピーク磁界近傍の磁束線 の振る舞いを観測し、臨界電流密度、Labusch パラメータffL と相互作用距離di の評価を行っ た。 測定 試料は引き上げ法を用いて製作した Y-123 単結晶超電導体で、得られた結晶を1 軸 圧力下で熱処理を行うことにより双晶面を取り 除いた。これを厚さ約0.7 mm 長さ1.2 mm 幅 1.2 mm 程度に切り出した。c 軸は広い面に垂 図1. SQUID 磁力計によって得られたY-123 直に配向し、臨界温度Tc は93.5 K であった。 超電導単結晶試料の臨界電流密度の磁界 SQUID 磁力計による磁化測定結果から臨界電流 依存性。 密度を求め、また電磁現象に関するより多くの データを得ることのできるCampbell 法を用い 参考文献 た。いずれもc 軸方向に磁界を印加しており、 Campbell 法では反磁界係数の影響を軽減するた 1) A. I. Rykov, W. J. Jang, H. Unoki and S. めにこのような試料を3 つc 軸方向に積み重ね Tajima: Adv . Supercond . VIII (Springer- て測定を行った。直流磁界に平行に35.0 Hz の Verlag, Tokyo, 1996) p. 341. 微小交流磁界(振幅b0 )を重畳し、交流磁界に 2) T. Matsushita, H. Yamato, K.Yoshimitsu, 対する応答をピックアップ・コイルを用いて測 K. Kiuchi, A. I. Rykov, S. Tajima and N. 定した。測定された交流磁束の振幅 とb0 の関 Koshizuka: Supercond. Sci. Technol. 11 (1998) 係から交流磁界の侵入深さ0 を求め、このb0 - to be published. 0 曲線の傾きから臨界電流密度が、またその結