論文概要 _________________________________________________________________________________________________________________________* *___________ _______所属の専門分野及び講座____________情報システム専攻__________電子情報基礎講座______________________________________* *____________ _______学生番号9_7674055________________________________氏名______平野達也_______________________________________________* *___________ _______論文題目B_i-2212_超伝導単結晶試料の不可逆磁界と磁化緩和率_________________________________________________________* *___________ 1. はじめに 超伝導体の不可逆磁界や電流の時間緩和率などの特性はピンポテンシャルにより 決定される。ピンポテンシャルを用いてこれらの特性をそれぞれ単独に説明することはこれま でになされてきたが、一つのパラメーターで統合的に説明する試みはなされてない。そこで本 研究ではBi-2212 超伝導体の磁界・温度依存性を考慮した一つのピンポテンシャルから求めた不 可逆磁界と磁化緩和率をそれぞれの実験値と比較し, 検討を行った。 2. 実験 試料はFZ 法で作成したBi-2212 単結晶で、酸素をオーバードープしたものであり、Tc は78.3 K であった。サイズは1.00 0.90 0.20 mm3 で、c 軸は試料の広い面に垂直に配向して いる。測定にはSQUID 磁力計を用い、磁界はc 軸方向に加えた。磁化の対数緩和率は、220 秒 から600 秒の緩和が顕著に起こっている領域で評価した。この磁化緩和率から見かけのピンポ テンシャルU0 を求めた。一方、磁束クリープ理論1) を用いて解析するために広い温度、磁界範 囲で磁化を測定し, 臨界電流密度Jc を求めた。また不可逆磁界はJc が106 A=m2 に減少する磁界 で決定した。 3. 結果及び検討 磁束クリープ理論1) によるとピンポテンシャルU0 は磁束クリープがないとき の仮想的な臨界電流密度Jc0 から求まる。この任意の磁界及び温度におけるJc0 (B; T ) は磁束ク リープの影響が小さい低温、低磁界領域の臨界電流密度の測定値とスケーリング則を用いて近似 的に評価される。こうして任意の磁界及び温度におけるピンポテンシャルU0 (B; T ) が求まる。 U0 からU0 を求めるためにWelch の理論式2) U0 = 1:65(kB T U02)1=3 を用いた。図1 にこうして得られた見かけのピンポテンシャルの予想値と磁化緩和率から求め た実験値と比較する。この図から磁束線の3 次元領域において両者は定量的に多少異なるもの の定性的によく一致していることがわかる。さらにこのピンポテンシャルと磁束クリープ理論 を用いて高温高磁界における不可逆磁界を求めることができる。こうして評価した不可逆磁界 と、実験から求めた値を図2 に示す。磁束線の3 次元領域において両者はよく一致していること がわかる。以上から磁束線の3 次元領域において一つのピンポテンシャルで低温領域と高温領 域を説明できると言える。また, 磁束線の2 次元領域での結果についてもほぼ説明できる事がわ かった。 図1. 見かけのピンポテンシャルの実験 図2. 不可逆磁界の実験値と理論値との 値と理論値との比較 比較 【参考文献】 1) T. Matsushita, T. Fujiyoshi, K. Toko, K. Yamafuji: Appl. Phys. Lett. 56 (1990) 2039. 2) D. O. Welch: IEEE Trans. Magn. 27 (1991) 1133.