研究紹介

研究内容は、まー、一言で言ってしまうと「超伝導」に関してです。
実験をする人とシミュレーションする人などいろいろです。
いろいろとやれるので結構幅広いです。

<研究紹介>

●高温超伝導体における磁束ピンニング機構と電磁現象

高温超伝導体の応用の可能性を握るのは液体窒素温度(77.3 K)などで
直流電気抵抗なしに流せる電流密度(臨界電流密度)である。
抵抗を生じないのは、電流によるローレンツ力が働いても
量子化磁束が動かないためである(動けば誘導電界が生じ、抵抗が発生する)。
このように量子化磁束の動きを止める作用を磁束ピンニング、その作用をする
超伝導体内の欠陥(常伝導析出物など)をピンという。したがって、強いピンを
超伝導材料の中に分散させることが大切である。ここでは有限温度での量子化磁束の
熱活性化運動(磁束クリープ)の影響下における磁束ピンニング特性を実験と理論の
両面から評価し、特性に及ぼす超伝導体の異方性、サイズの影響などについても
調べている。さらに、交流通電下などで生じる交流損失の解析を行い、ポテンシャル場
での量子化磁束の運動を積極的に利用して交流損失を大幅に低減する方法について
提案し、その検証を行っている。

●Bi-2212単結晶における臨界電流密度の異方性の評価

Bi-2212とは、超伝導体である。
その超伝導体とは、電気抵抗ゼロで電流を流すことのできる物である。
ただし、超伝導状態にするには超伝導体自身を冷やす必要がある。
この超伝導状態に成る境界の温度を、臨界温度Tcという。
本研究で使用したBi-2212単結晶のTcは約90 K(摂氏−183℃)である。

図1 Bi-2212単結晶の結晶構造

上図に示してあるのが、Bi-2212単結晶の結晶である。
Bi-O-Sr-Oがブロック層と呼ばれ電気的に絶縁で、Cu-O2-Ca-Cu-O2層が
超伝導層と呼ばれ超伝導電流を流すことのできる層である。Bi-2212単結晶は層構造をしている。
そして、ブロック層のほうが超伝導層より厚いため、c軸方向に電流を流すと、電流が損失される。
ab平面方向では、電流路が超伝導層のみとなるため電流の損失はない。
このことよりc軸方向とab平面方向では電流が大きく違うことより
異方性(方向によって性質が異なること)が存在する。
またBi-2212はブロック層が超伝導層より非常に大きいため、異方性が大きい。

従来単結晶の組成比は定比であるとされてきた。
しかし、近年になり組成比が定比からすれていることがわかった。
また、近年では組成比が定比のBi-2212単結晶が作製可能となっている。

Bi系超伝導体では、ある温度を境に臨界電流密度Jcが大きく変化している。
この原因を調べるため本研究では具体的に定比、不定比のJcの異方性の評価を行った。
実験では、SQUID磁力計で磁気モーメント計測し、その磁気モーメントからJcを算出する。
そして、Jcの分離を行い、電気的異方性を求める。以下に実験結果を示す。

 図2 Jc-T特性

 図3 電気的異方性

図2より、黒丸が定比であり白丸が不定比蘇生の試料の実験結果である。
図より定比の方が全ての温度でJcが高く、温度依存の変化が顕著な点が定比で約20 Kから25 K、
不定比では約15 Kから20 Kと組成比によって違うことがわかる。
これを踏まえ、電気的異方性について考える。
図3は電気的異方性を示している。定比と不定比を同じ図で示してあるが、
Jcの分離の方法で測定するたびに傾向は変化しないが、値の大きさは少々変わるため、
定比と不定比を比べることはできない。それぞれの傾向を見ると、定比も不定比も低温で電気的異方性が小さく、
高温で電気的異方性が大きくなっている。また、境界の温度は25 K付近である。

本研究では、外部磁界をc軸方向とab平面方向の2つの測定方法で行っている。
図2がc軸方向の場合で、図3がab平面方向の場合である。
外部磁界のかけ方が違うのにもかかわらず転移温度がほぼ同じ25 Kを示すことから、
低温で特性がよくなるのは磁束線の振る舞いではなく試料そのものの特性向上の可能性が高い結果となった。

●CVD法によるYBCO線材の磁化緩和特性に超伝導層厚が与える影響

超伝導体とは、極低温下で電気抵抗がゼロとなる性質を持つ物質です。
この『電気抵抗ゼロ』という性質を利用することで送電ロスの無い送電線や、
大電流を用いた強力電磁石など、これまでの技術では実現不可能だった装置を実現することができます。
しかしながら、超伝導体が超伝導現象を示すのは極低温であることから、専用の冷却装置を必要とします。
また、電気抵抗ゼロで超伝導体に流せる電流密度も無限ではなく、
一定以上の電流を流すと通常と同様な電気抵抗が発生します。
この超伝導体に流せる電流量が超伝導対応用の要ともいえる特性であり、
私達の研究室では伝導体の更なる特性改善を目指し、超伝導体の性能評価を行っています。

さて、現在私の研究テーマであるYBCO線材は液体窒素沸点(−196℃)よりも高温で超伝導特性を示す、
高温超伝導体と呼ばれる物質です。YBCOは(Y−Ba−Cu−O)からなる結晶です。
高価な液体ヘリウムを冷却に必要としないため、今後の超伝導応用の中でも特に有力視されています。
YBCOは結晶構造に異方性があるため、そのまま線材にしたのでは、流せる電流量が少なく実用的ではありません。
そのため、真空中で気化させたYBCO線材を基板上に積み上げ結晶を成長させることで、
高い電流を流せるようになります。このとき、YBCOを積み上げる基板も、
結晶が綺麗に積みあがるよう工夫されたものを用います。いったん気化させたYBCOを基板に積み上げるため、
線材の作製時間がかかり線材コストが高くなります。また、その製作法から長い線材を作ることが困難です。
このようにYBCO線材を実用化は、非常に困難ですが企業の努力や研究者たちの研究成果により、
長く大きな電流を流せる線材が実現されつつあります。

結晶を基板上に積み上げるときにYBCO層を厚くすればするほど、積み上げたYBCOの結晶が歪んでしまい、
流せる電流量が少なくなっていきます。
しかしながら、高温・高磁界では厚いYBCO層を持つ線材の方が特性劣化の幅が小さく、
応用に最適な超伝導層厚さを決めることが重要です。


●研究室風景

→冷蔵庫

研究室の日常的?風景です。雰囲気だけでも感じ取ってください。
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